書誌情報:カナリア書房,181頁,本体価格1,400円,2012年9月20日発行
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内モンゴル(中国の自治区,独立国家のモンゴルとは別)のホルチン砂漠は30年前までは草原だった。毎年数キロも東進しており,黄砂の一源になっている。緑化を進める日本の企業(たとえば日立)や団体が10以上あるそうだ。
ホルチン砂漠南西端にある西ドンホラ集落と中部にあるチャイダムとウナガの集落では日本の植林団体 GBA が提起した牧農林複合方式による経営方式が軌道に乗りつつある。この事例を紹介し,内モンゴルの砂漠と貧困をビジネスで退治しようというのだ。リオ20宣言のグリーン経済を実践するとともに,日本からの投資プロジェクトとしても魅力的であることを力説している。とくに東部の通遼市は,肉牛加工,カシミヤ製品,羊加工,牛皮革加工,蕎麦加工,草原民族文化観光区と砂漠地の総合開発の各プロジェクトを進めている。
造林が牧畜と農業に役立ち,牧農林が相互に補完しあう複合方式は,自然と自然の恵みから一方的に得る生産システムへのアンチ・テーゼの意味を持つ。
本書を繙いたのは,現在内モンゴルからの院生がふたりいるからである(ふたりともモンゴル族)。ひとりの実家は牧畜を営み,もうひとりは西の方のある砂漠のすぐ傍に住んでいたというから,牧農林は身近な言葉である。内モンゴルに帰って母国(母洲)の発展に関係してほしいと思って,手がかりを探していたところだった。社会貢献をしながらビジネスを展開する。ホットな切り口で地域循環型経済システムから内モンゴル発展の道筋を通観していて,希望を抱かせる痛快本だ。
環境破壊と貧困の悪循環を絶ち牧農林複合方式による農村の自立構想はけっしてモンゴトピア(書きながら思いついた,モンゴルのユートピアという評者の造語)ではない。それもそのはず,著者は内モンゴル・ホルチン砂漠の牧戸出身の留学生とともに砂漠化の中での牧業振興策を模索してきたからである。
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