960斉藤賢爾著『これでわかったビットコイン――生きのこる通貨の条件――』

書誌情報:太郎次郎社エディタス,96頁,本体価格1,000円,2014年5月5日発行

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インターネットを使った「P2Pデジタル通貨」であるビットコインへの評価は毀誉褒貶相半ばしている。昨年後半からビットコインに関心が高まり新聞やテレビ(たとえばNHKクローズアップ現代」No.3455(2014年1月21日放送)での「仮想通貨 VS 国家 ビットコインの衝撃」)で多く取り上げられた。
今年になってからはビットコインの取引所である「マウントゴックス」(日本)や「フレックスコイン」(カナダ)が取引停止をし,別の取引所「ポロニエックス」ではハッカーの攻撃によってコインの一部が失われたりした。2009年に「実用化」されたビットコインはどこへいくのか。一時の熱狂はなんだったのか。
ビットコインの一番の特徴は政府や中央銀行でない個人が作りだしているところにある。「信用ではなく暗号学的な証明に基づく電子的支払いシステム」(設計文書,引用は3ページから孫引き)というのだが,「P2Pといいながら,強大な力で中央(《ブロックチェイン》)を維持しようというしくみになっています。その中央が崩れたり,枝分かれしたり,中央へのアクセスが妨げられたりすると,ビットコインはまともには使えなくなります」(80ページ)。
いわゆる貨幣論の言葉をそのものとして使っていないものの,人と人との直接的関係と信用・貨幣の世界との関係とをしっかり押さえ,「暗号学的な証明に基づく電子的支払システム」の限界を指摘している。
ビットコインは「貨幣の問題を解決するものではない」(75ページ)のだ。