977田中ひかる著『生理用品の社会史――タブーから一大ビジネスへ――』

書誌情報:ミネルヴァ書房,ix+254+31頁,本体価格2,400円,2013年8月25日発行

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テレビ,新聞,雑誌には生理用品の広告が普通にある。やけにリアルなCMも目立っている。生理用品はいまや不浄からビジネスに浮上したのだ。
生理用品発展の軌跡を追跡する前に不浄観=月経タブーの歴史を繙いていた。月経タブーは「平安時代の宮廷祭祀の場で女性抑圧のシステムとして創出され,貴族社会から一般社会へ,中央から地方へと伝播していったとする説が有力」(63ページ)と整理し,浄土宗や曹洞宗の勢力が強かった地域に多いことを確認していた。また,月経タブーは太政官布告五六号(1872(明治5)年)に公には廃止された。大相撲の土俵上や各種祭祀では月経タブーと結びついた穢れ観による女性排除が今なおある。月経小屋なる隔離部屋が西日本に多かったことも紹介していた。
脱脂綿からアンネ社による使い捨てナプキン(紙綿),綿状パルプ(=研ナオコ),高吸収性ポリマーと生理用品は進化し,「機能,サイズ展開の充実という点において,日本の使い捨てナプキンは,世界最高水準にあるといっても過言ではない」(191ページ)とのこと。布ナプキンやタンポン,さらには月経カップのようなものも開発されている。
東日本大震災直後の被災地では水,食料品,毛布などに次いで必要とされたのはトイレットペーパー,使い捨ておむつ,生理用品などであった。それだけ身近な「生理用品に触れずして,女性の歴史は語れない」(iiページ)のだ。
滅多に使う機会がない男こそ読むべき本だ。