276空白の60年:水爆実験の被ばく

NHKスペシャル「水爆実験 60年目の真実――ヒロシマが迫る”埋もれた被ばく”――」(→http://www.nhk.or.jp/special/detail/2014/0806/)を観た。
高知の高校生が長年取り組んできた調査と広島大学の研究者による科学的調査がようやく結びついた。ビキニ環礁でのアメリカの水爆実験による被ばくとその実態を日米政府によって隠されてきた理由がはっきりしてきた。
被ばくの実態調査をしながら長らく資料がないとされてきたが,アメリ国立公文書館にその資料があり,外務省にも検査資料があった。またアイゼンハワー大統領図書館には日本における放射能パニックが共産主義化を招く恐れがあり,それを防ぐために原子力平和利用博覧会(1955年〜57年)はじめ原子力の平和利用を宣伝する必要性を強調する文書があった。その結果,日本では反核感情を取り除くことができたという。
当時の漁船員の血液検査による染色体異常や歯のエナメル分離による放射線量推定,さらには水爆実験による空間放射線量のデータと103隻の航路図による98隻の被ばくの実態は,米ソ間の熾烈な核開発競争と大規模な被ばくを明らかにしていた。ブラボー(3/1),ロメオ(3/27),ユニオン(4/26),ヤンキー(5/5),ネクター(5/14)と54年3月から5月にかけての水爆実験による被ばくの全容解明はようやく緒に就いたといえよう。
69年目の広島原爆記念日にふさわしいスペシャルだった。