856オオヤミノル著『美味しいコーヒーって何だ?』

書誌情報:マガジンハウス,239頁,本体価格1,600円,2013年5月23日発行

美味しいコーヒーって何だ? (CASA BOOKS)

美味しいコーヒーって何だ? (CASA BOOKS)

  • 作者:オオヤミノル
  • 発売日: 2013/05/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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井上誠著『コーヒー入門』(社会思想研究会出版部現代教養文庫,1962年,[ASIN:B000JALKKK])は座右の書だった時期があった。大学の寮生活を送るなかで当時流行っていたサイホンを買い込み一日に何度も飲んでいたからだ。サイホンが示すように,関心はもっぱらコーヒーの入れ方であったが,焙煎によってもコーヒーの味が違ってくることは身をもって知った。一度はネルで入れると美味しいと言われ試したこともある。いまは商品回転のいい店でUCCのコーヒーを買い,ペーパーフィルターで入れる毎日である。アルコールを胃袋に落とし込まなくても生きてはいける。豆をミルで砕き,濃いめのコーヒーを一杯飲まないと一日が始まらない。
本書は,京都の焙煎家オオヤミノルが名だたる焙煎家(鹿児島・国分「ヴァアラ珈琲」の井ノ上達也,鎌倉「ヴィヴモン・ディモンシュ」・堀内隆志,東京「大坊珈琲店」・大坊勝次)との対話集である。生豆は「きまめ」でなく「なままめ」であり,スペシャリティーコーヒーではなくスペシャティーコーヒーであり,煎るではなく焙るとこだわる井ノ上,直火焙煎でマイウェイを貫く堀内,コーヒーも「串打ち3年,裂き8年,焼きは一生」と焙煎に到達点はないと断言する大坊と三者三様の焙煎哲学がおもしろい。
オオヤのときに空回りするしゃべくりは焙煎の深さと濃さのあらわれか。