書誌情報:新評論,xii+338頁,本体価格3,200円,2010年5月15日発行
- 作者:渡辺 龍也
- 発売日: 2010/05/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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新しい経済秩序をみずから創造する試みとしてフェアトレードに注目してきた。フェアトレードは慈善活動として始まった。キリスト教メノナイト派の救援開発NGO (MCC) のボランティアをしていたエドナ・バイラーが,プエルトリコ女性の刺繍製品を車のトランクに積んで売り歩いたことから始まったという。イギリスでは「オックスファム」がよく知られているが,これも古着などの不要品販売による途上国支援がその始まりである。
本書にはフェアトレードの歴史,現状,課題・争点,さらには批判も取り上げられ,学的対象にした著者のフェアトレード学の成果が織り込まれている。フェアトレードにたいする「右」からの批判としてアダム・スミスの名を冠した「アダム・スミス研究所」があり,フェアトレードに徹底した批判をしているそうだ。著者は個々の論点を紹介しつつフェアトレードの意義を再確認し,堂目本(→http://d.hatena.ne.jp/akamac/20080408/1207647428)をもとにアダム・スミスをフェアトレードの古典として再定置している。「(スミスの思想は:引用者注)「フェアトレード」の思想そのもの」(254ページ)との切り返しは痛快だ。
ネオリベラリズム対フェアトレードという対立構図の強調を基調としながらも個々のフェアトレードのイニシアティブの重要性と企業・政府との関わりについてバランス良く記述している。生産者・理念重視から企業・消費者重視と揺れ動き,ようやく立ち位置が確定したかにみえるフェアトレード。「歴史と課題を総ざらい,必読・必携の入門書!」の惹句は期待を裏切らないはずだ。
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