604小澤卓也著『コーヒーのグローバル・ヒストリー――赤いダイヤか,黒い悪魔か――』

書誌情報:ミネルヴァ書房,xiv+326+6頁,本体価格3,000円,2010年2月25日発行

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コーヒー産業を生産から消費にわたってバランス良く叙述した本は意外に少ない。フェアトレードの影響力の増大とともにコーヒーのグローバル・ヒストリー――生産,精製,金融,貿易,焙煎,広告,小売,販売,消費などをふくむコーヒーの世界史――の理解はますます重要になっている。
著者は農産物としてのコーヒーの歴史と飲み物としてのコーヒーを解説し,生産(ブラジル,コスタリカ,コロンビア,ベトナムエルサルバドルグアテマラ)と消費(アメリカ,ヨーロッパ,日本)の特徴を描く。「(コーヒーを)まるごと理解するための基礎的な参考書」が本書のコンセプトになる。
ラテンアメリカを知るためにはコーヒー産業の理解は欠かせない(著者はラテンアメリカ近現代史を専門としている)。コーヒーについての雑学知識を織り交ぜ,日本特有の「缶コーヒー戦争」,コーヒー・チェーンの展開まで押さえることができるのがいい。
「違いがわかる女」はもちろん,大沢たかおより「違いがわかる男」になれることは間違いない。