1160『別冊環21 ウッドファースト!――建築に木を使い,日本の山を生かす――』

書誌情報:藤原書店,415頁,本体価格3,800年,2016年5月10日発行

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地域創生の鍵を山の再生に託し,木の家,建築,里山林業から座談と論文,エッセイと盛りだくさんの内容だった。たんに伝統的な木造建築を見直すだけでなく新しい木造公共建築物にも視野を広げ,建築に木を使う運動「ウッドファースト」を提唱していた。
木村一義「新しい木造建築を実践して」で紹介されていたのが南陽市文化会館と京都木材会館。前者はギネス世界記録「最大の木造コンサートホール」に認定された木造コンサートホールだ。残響音が短いのが最大の特徴で立体トラスと耐火大断面集成材の組柱の巨大架構である。後者は日本初二時間耐火部材使用の木造四階建てビルである。
中川理「コンクリートの城を「木の建築」にしてみたら」は文化財や景観財の観点から論じたもので,コンクリート造の熊本城の落城を予想していたわけではない。「木造であった城郭建築を鉄筋コンクリート造に替えてしまうと,その時点で文化財としての勝ちは失われてしまうはずだ」(233ページ)。本物である木造城郭に本物だけでなくもっと自由を,とは再現と創造とを主張しているのだろう。