1212村上裕著『中国・社会主義市場経済と国有企業の研究――鉱工業部門についての考察――』

書誌情報:八朔社,401頁,本体価格6,500円,2017年2月10日

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中国の経済体制は社会主義市場経済であるとしても,国有経済部門と非国有経済部門を比較すると,鉱工業では非国有経済部門が優勢である。しかし,売上高利益率や付加価値生産量などの指標によれば国有経済部門が優勢となる。著者は国有経済部門に国の所有が100%だけでなく国の所有が100%未満だが国の筆頭所有者になっている国有株支配企業を入れることによって,中国経済を国所有(国有および国有株支配企業)による資本主義的生産方法に見ている。
国有企業の区分の再構築と統治,さらにはそれらを補強する業績指標の分析を経て,「『資本論』を主な参照基準」(13ページ)として中国社会主義市場経済の制約をこの資本主義的生産方法にあると見通していた。
鉱工業部門に限った分析とはいえ,大学卒業後37年後から社会人大学院生として学位論文として纏めた研究成果はポスト定年の「サラリーマン・インテリゲンチャ」(評者の造語)を地で行く感がある。