1767大塚英志・星野幸代編『[日文研究・共同研究報告書201]労働と身体の大衆文化』

書誌情報:水声社,316頁,本体価格5,500円,2024年1月10日発行

身体的・視覚的大衆文化(舞台芸術,大衆芸能,合唱,視覚的・聴覚的メディアなど)が戦時から今日にいたるまで続いてきたのはなぜか。戦前・戦中はプロパガンダとして,戦後は左翼運動としても連続したのはなぜか。
たとえば,戦時期の厚生運動は体位・体力の向上や余暇の善用を目的として,勤労者や職場のレクレエーション運動として展開され音楽も利用されていく。戦後直後から関鑑子によって始められたうたごえ運動は社会運動として平和活動に連なっている。一方は戦争遂行として,他方は戦争反対・平和運動としてその性格はまったく反対でありながら,音楽の社会性としては「通底する思考」があったからである。
いかなる体制にあってもしぶとく社会に根付く大衆文化の強靭さを感得できるモノグラフィーがおもしろい。