014マルクス切手

akamac2007-03-28

この話題はどうみても郵便学者・内藤陽介(http://yosukenaito.blog40.fc2.com/)さんのテリトリーだ。ただ内藤さんはまだマルクス切手には触れていないようなので,確信犯で領海を侵犯してみる。
鈴木鴻一郎『資本論遍歴』(日本評論社,1971年7月,どこにもISBNが見あたらない。また,遍歴の「遍」は,タイトルでは「ぎょうにんべん」)に,マルクスの切手関係の既発表エッセイがいくつか収められている。「経済学と切手」(初出『経友』第2号,1959年2月),「マルクス切手を蒐める」(初出『東京大学新聞』1964年7月8日),「マルクス切手91枚」(初出『日本経済新聞』1967年2月9日),「マルクス切手のはなし」(初出NHKラジオ放送1968年1月26日),「最近のマルクス切手」(初出『図書』1968年8月),「最近のマルクス切手・補遺――ハンガリーマルクス生誕150年記念切手その他について――」(初出『図書』1968年9月)がそれらである。写真は,口絵をスキャンして,縮小したもの。
鈴木自身切手の収集家であり,マルクス切手もそのコレクションのひとつだったようだ。マルクス(とエンゲルス)がはじめて切手になったのは,1919年ハンガリーとのこと。大概は1933年以降,とくに第二次世界大戦後以降に発行された。1953年(マルクス没後70年,生誕135年にあたり,「カール・マルクスの年」と呼ばれた。)には,17種類のマルクス切手が発行された。ソ連を中心とする社会主義諸国にかぎられており,1965年に北京で開催された「第6回共産諸国郵政大臣会議」記念ではほとんどまったく同じ意匠のマルクス切手が9枚発行された。つまりほとんどのマルクス切手は第二次世界大戦後だ。
1967年の『資本論』発刊100年記念の際には,ソ連ルーマニアで発行されたにすぎない。翌1968年はマルクス生誕150年にあたる。この年には,ブルガリアチェコスロバキア東ドイツソ連,西ドイツ(資本主義国としては最初のマルクス「記念」切手発行。ただし,第二次世界大戦直後の1947年に,フランスが占領していたラインランド・プファルツ地区ですでにマルクス「通常」切手が発行されていた。),アルバニア,そしてハンガリーの7カ国で発行された。この2年で都合14枚のマルクス切手発行になる。この時点でマルクス切手は合計113枚。鈴木のこの本の発行現在で,最終的に(1970年末現在),合計119枚のマルクス切手になった。鈴木はすでに天に昇られた。鈴木コレクションはどうなったのだろうか。
杉原四郎『読書颯々』(未來社,1987年9月10日,asin:4624600754)によれば,その後のマルクス切手の動向がわかる(初出『電波新聞』1983年10月15日号)。

今年(1983年:引用者注)の人物切手で最も種類の多いものの一つは,マルクス(1818-1883)であろう。彼の切手はこれまで十数カ国から約200種類も発行されているが,没後100年の今年も,ソ連・中国・北朝鮮・東独・アルバニアキューバニカラグアなどの社会主義国はもとより,印度でも発行された。印度の切手は,マルクスの肖像と,その上に主著の題名『資本論――経済学批判』がドイツ語で印刷されている。今年のマルクス切手で一番種類の多いのは東ドイツの6種セットで,その中の一つにも『資本論』の題名が出てくるが,それにはドイツ語の原著の他,フランス語訳とロシア語訳の題名も並べて印刷されている。(24-25ページ。漢数字を算用数字に変えて引用している。)

杉原も切手のコレクターとして知られている。多分多くのマルクス切手が彼の手元にあるにちがいない。
ベルリンにいるドイツ人の知り合いR.H.はほとんどすべてのマルクス切手を持っているという。近い将来,『マルクスカリカチュア』と題して,切手,カリカチュアを集めた本を出すとのことであり,昨年秋そのプロト・タイプを見せてくれた。はたして,マルクス切手の総数は?