書誌情報:河出書房新社(河出ブックス011),218+iii頁,本体価格1,200円,2010年2月28日発行
日本語は生きのびるか---米中日の文化史的三角関係 (河出ブックス)
- 作者:平川 祐弘
- 発売日: 2010/02/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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21世紀には多くの日本人は日本語を地方語として,英語を標準語として話すことになるだろう,という。世間一般がバイリンガルになり,発言力ある知識人はもうひとつの言語(日本語の古文や漢文も含む)を使いこなす能力を持っていることが必要になると見通す。「トライリンガルな,第二外国語をも駆使し得る,三点測量のできる能力」(162ページ)がそれで,「多力者(たりきしゃ)」(同上)である。
著者のいう「三点測量」とは,語学力だけでなく「文化史的」「比較史的」な視点(わがブログで指摘した「視座」とも言い換えている)をも含意しているようだ。「三点測量」のためには,母語と第一外国語プラス第二外国語が必要十分条件であり,二つだけの比較では見えてこない立体的な感覚を備えることができるからだ。
「多力者」である著者ゆえに主張できる論点であろうが,「寡力者」「少力者」の評者でもその意義はわかる。語学力が決定的だとしたら多数を占める「寡力者」「少力者」からすればエリート臭さを感じざるをえない。「文教当局は日本の知的選良を育てるために特別新幹線を別途に建設し,そこで外国語とともにノブレス・オブリージをも教え込む文武の特別教育を施すべき」(193ページ)との提言を読めば,「三点測量」の必要性を誰に向けているのかわかる。
複数国への留学という複数異文化経験は誰にでもできるわけがない。それでも「三点測量」をすることができるための何かが問題なのだ。
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