434ファラデーが手にした和蝋燭

桐山桂一「和技を旅する⑤ 自然の灯火 和蝋燭を訪ねて」(富士ゼロックス『グラッフィケーション』第174号,通巻363号,2011年5月)を読む。ファラデー著『ロウソクの科学』の引用から始まり,「同書には意外なことに,日本の蝋燭の記述が何カ所かに登場する」としている。

私たちが開国させたおかげで,あの世界のはての日本からとりよせることのできたロウソクもここにきております。これは,親切な友人が私に送ってきた一種の蝋燭で,ロウソクの原料がこれでまた一つふえたことになります。(角川文庫版より)

このロウソクにいちじるしい特徴があります。それはすなわち,穴のあいた芯をもっていることであります。(同上)

牛脂,鯨油蝋燭,蜜蝋,パラフィン蝋燭などに櫨(はぜ)の実から作る和蝋燭がファラデーのコレクションに加わったことを記したことになる。1861年のクリスマス休暇のときのことである(ロンドン王立研究所の6回のクリスマス講演)。桐山が紹介しているのは愛媛県内子町にただ一軒残る大森和蝋燭屋である。櫨の実から「生蝋(きろう)」・「木蝋(もくろう)」の製造過程,蝋燭の芯づくりなどを写真入りで紹介している。
大森和蝋燭屋製内子の芳我家和蝋燭晒蝋(さらしろう)がシカゴ万博(1893年)・パリ万博(1900年)・セントルイス万博(1904年)に出品されたこと,明治時代には海外に「ベジタブル・ワックス」の名前で輸出されたこと,大森和蝋燭屋製和蝋燭が2001年から大英博物館に保管されていることは新しい情報だった。
20世紀に入り木蝋の入手が困難になったことや石油から精製するパラフィンの時代,さらには電灯が普及して和蝋燭は廃れるまでは日本各地で和蝋燭が作られていた(庄内,会津,越後,越前,七尾,飛騨,三州岡崎,近江,京都,西宮など:参考「希少伝統工芸品−和ろうそくのいろいろ」→http://www.remus.dti.ne.jp/kojyo/topics/t20100606.html)。ファラデーの見た和蝋燭はどこのものだったのだろうか。ファラデーに,ロウソクに詳しい方の情報をお願いしたい。