書誌情報:草思社,310頁,本体価格2,500円,2012年8月16日発行
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著者が訪れた紙の里は300以上という。北海道と沖縄以外はマイカーで回り2年半で約8万1000kmを走行した。わしも和紙は好きだが,著者の和紙にかける思いにははるかに及ばない。
手漉き和紙には紙魚(しみ)――世界中に約200種類,日本にも数種類いる――がつかない。紙魚がつかないトロロアオイやノリウツギをノリを使っているからだ。手漉きでも米ノリや蒟蒻(こんにゃく)ノリを使っていると紙魚がつく。
手漉き和紙は,各種文化財の修復,絵画・版画・書道,歌舞伎・芝居の舞台衣裳や小道具,大相撲の提灯,日本髪の元結,扇など今なお需要がある。だが,和紙の里の現状は厳しい。
紙漉体験学習の際,「なぜこんな体験をさせるのだ,もし将来,紙漉きをしたいと言い出したら,責任を取ってくれるのか」というクレームがあったそうだ。
伝統的な和紙づくりを,「江戸・京都・大坂を支えた紙里」,「紙祖神たちの里」,「僧が興した紙里」,「古代・中世より伝わる歴史の紙里」,「落人が開いた紙里」,「殿様が奨励した紙里」,「幕末・明治〜昭和期に注目を浴びた紙里」と,あえて「一代漉きの挑戦」をしている全国各地の和紙づくりとを紹介している(100ほどの紙里)。
愛媛県では,大洲和紙(内子町),泉貨紙(西予市),伊予和紙(川之江半紙)(四国中央市),周桑和紙(西条市)が本文で紹介されていた。
最盛期の20世紀初めに全国で6万8562戸の漉き屋があったという。都道府県にひとつはある紙里(巻末に旧市町村名付きの「探訪紙里一覧」がある)は,いずこも後継者問題を抱えている。「一代漉きの挑戦」(16紙)は一筋の光明のように思えた。
- 著者のコラム「手漉き和紙の里(KK)」(「旅じゃ.com」)→http://tabija.com/category/001_japanese_paper_washis_home/
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