NHKスペシャル「沢木耕太郎推理ドキュメント 運命の一枚――"戦場"写真 最大の謎に挑む――」(→http://www.nhk.or.jp/special/detail/2013/0203/index.html)を観た。
ロバート・キャパと言えば「崩れ落ちる兵士」。「傑作」と言われながらも真贋論争が絶えなかった一枚の写真を,20年近くこの写真の真贋を追ってきたという沢木耕太郎が最新技術の助けを得て解明したドキュメントである。
撮影したのはもうひとりのキャパと言われ恋人だったゲルタ・ポホイル(ゲルダ・タロー)――「タロー」のペンネームは若き画学生としてパリに滞在していた岡本太郎の東洋的響きに惹かれて付けたといわれる――ではなかったかというのが推理である。それとともにキャパが「崩れ落ちる兵士」について黙して語らなかった理由や命知らずの戦場取材の背景が描かれていた。
ハンガリーでユダヤ人として生をうけ,反ファシズムの意志を写真で表現しようしたキャバが,もうひとりのキャバとともに「崩れ落ちる兵士」を意図的に作り出した。そしてその作品がピカソの「ゲルニカ」とともに反ファッショの象徴になる。キャパ伝説を解読するすばらしいドキュメントだ。
『週刊新潮』2013年1月31日号には「生誕100年 2人のロバート・キャパ」という白黒グラビア5ページの記事が出ている。ゲルダの存在とキャパの生涯,さらにスペイン内戦中の取材で命を亡くしたゲルダの再評価をまとめていた。沢木の「キャパの十字架」(『文藝春秋』2013年1月号)を参考文献に挙げているから,撃たれていない「兵士」の話を知った上での記事と見た。
横浜美術館では「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」(1月26日〜3月24日→http://www.yaf.or.jp/yma/jiu/2012/capataro/)が開催中だ(「兵士」はキャパの作品としている)。是非見てみたい企画だ。
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