1039吉岡栄二郎著『ロバート・キャパの謎――『崩れ落ちる兵士』の真実を追う――』

書誌情報:青弓社(写真叢書),234頁,本体価格2,000円,2014年8月23日発行

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沢木本(関連エントリー参照)でキャパの謎が解明されていたわけではなかった。足を滑らせた兵士と「崩れ落ちる兵士」とは同一人物である,「崩れ落ちる兵士」は撃たれていなかったという沢木説とは異なり,同一人物ではないこと,味方の兵士が誤って発砲してしまい間もなく死んでいるとしていることだ。
スペイン内戦中の政治的対立や多くの虐殺など当時の状況にキャパとゲルダを置き,「崩れ落ちる兵士」を撮ることになる背景と「崩れ落ちる兵士」の真相解明の研究とが同時に描かれている。
トロツキー写真(注で言及),ボルケナウやヘミングウェイとの接点,キャパ研究者リチャード・ウェランと「崩れ落ちる兵士」の場所特定に貢献した二人の研究者(ススペレギとフェルナンド)の詳述なども本書の魅力のひとつだ。
東京富士美術館所蔵写真展「ロバート・キャパと過ごす時間/光の風景へ」(関連エントリー参照)であの作品をキャパとしていた理由がわかった(著者は東京富士美術館研究部長だった)。