819平野公憲著『私の展覧会クロニクル――1978〜2009――』

書誌情報:論創社,口絵6+vii+213頁,本体価格2,000円,2012年11月20日発行

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著者は新聞社の企画部,文化企画部,企画事業部で長年にわたって文化催事のひとつとしての展覧会づくりを手がけてきた。現役時代の年間出張が100日におよぶことがあったというから展覧会づくりがデスクワークではないことがわかる。展示作品が陽の目をみるまでの裏方が綴られている。
展覧会が実現するまでには企画から作品の貸与や開催権(こういう権利もあるのだ),作品の実見,さまざまな交渉などのほかカタログやグッズの売れ行き,入場者数まで多岐にわたる。展覧会が学芸員の仕事だけで成り立っているわけではないというより,学芸員がはたして必要なのだろうかと思うほど,新聞社の文化企画力を知らされた。
美術工芸や歴史考古学にかかわる展覧会は入場者数も図録の販売数も絵画展に及ばないというが,著者がかかわった展覧会のリスト(名称,会場,期間,入場者数,図録販売数)からは数だけではない「もの」づくりへのこだわりを垣間見ることができる。企画する新聞社と会場の美術館・博物館(とくに国立の場合)の赤字・黒字模様,電通や日通の企画とのかかわりなどもおもしろく読める。
本書にある展覧会には足を運んだことがない。入場者数や図録販売数にまったく貢献していなかった。