書誌情報:東洋経済新報社,221+XV頁,本体価格1,500円,2013年4月11日発行
- 作者:辻 太一朗
- 発売日: 2013/03/01
- メディア: 単行本
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世界一かどうかはともかく,大学生・大学・企業の三者にある「負のスパイラル」を脱して学生が学ぶシステムを第一に考えるべきだとする提案はもっともだ。大学で学ぶうえでもっとも大事なことを「考える力」とし,それを育成し評価する内容に変えていけば実現するというのも説得的である。
「理解することも難しい」「一定の量の記憶も同時に必要」「論理的に考える必要がある」「概念的な問題も多い」「プロ中のプロである教員との対話」など少人数のゼミだけでなく大人数講義でも「考える力」の育成・評価は可能だ。成績の相対評価も不可欠である。
教育レベルは「時間」「指導の質」「学生の真剣度」によるから指導の質に焦点を当てたFDだけでは成果が出ないという指摘も正しい。ただ,多くの大学の問題意識は狭いFDを超えて著者の言う「考える力」の育成と評価に向かっている。「より重要なのは,教育を受ける学生の真剣度を変えることです。学生が学ぶことに真剣になれば,おのずと質の低い授業は淘汰されていきます。また,評価があいまいな授業も同様です」(131ページ)。これも大学の共通認識になりつつある。
著者がかかわるNPO法人DSS(「特定非営利活動法人 大学教育と就職活動のねじれを直し 大学生の就業力を向上させる会」)による調査(首都圏の「有名」――なぜ「有名」大学だけにしたのか――9大学28大学に在籍している4年生約2,000人への調査結果はそれとして参考になる。
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