956市川伸一著『勉強法の科学――心理学から学習を探る――』

書誌情報:岩波科学ライブラリー(211),xi+110頁,本体価格1,200円,2013年8月6日発行

勉強法の科学――心理学から学習を探る (岩波科学ライブラリー)

勉強法の科学――心理学から学習を探る (岩波科学ライブラリー)

  • 作者:市川 伸一
  • 発売日: 2013/08/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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コンピュータによる情報処理によって人間の知的システムと知能の特性を研究していることを知ったのは20ほど前のことである。心理学,人工知能言語学などの分野からコンピュータを利用した学びを体系化しようという動きが始まっていた。その時に,「認知科学」という研究分野があることを知った。
本書は10代の読者を想定して認知心理学をベースに学びの意味を考えている。情報や知識をどのように取り入れ問題解決に生かすかといろいろな学ぶの動機づけ理論があることを説明している。学びという行為を認知心理学の知見をもとに解説し,他者との関係性のなかでの楽しさに見いだしていた。
「美術の専門家は一枚の絵について,詳しい解説をすることができます。スポーツの専門家は,試合での一つの場面について詳しい解説をすることができます。同じものを見ていても,そこで広がってくる表象がちがうのです。私たちの学習も,まさに豊かな表象をもつためにあるということですね」(49ページ)。受験生も読むことを意識しながらも,効果的な勉強法の域にとどまっていないところがいい。