1169酒井哲哉・松田利彦編『帝国日本と植民地大学』

書誌情報:ゆまに書房,638頁,本体価格12,000円,2014年2月25日発行

帝国日本と植民地大学

帝国日本と植民地大学

  • 発売日: 2014/02/25
  • メディア: 単行本

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帝国日本の植民地論に高等教育機関という知的制度から挑んだ大著である。京城帝国大学(→ソウル大学校)と台北帝国大学(→台湾大学)を対象に植民地大学を多面的に論じた論文集でもある。ソウル大学校台湾大学への連続と不連続の論点――植民地大学の歴史的位置づけの相違――を十分意識した日本・韓国・台湾の研究者による国際的共同研究としても特色づけることもできる。
植民地大学の設立・組織・人事など制度的考察と植民地大学を支えるエートスや理念を扱った第I部,植民地大学の学知と機能を扱った第II部,植民地大学と帝国日本の遺産と第二次世界大戦後のアメリカ要因の関連――琉球大学琉球政府立大学から国立大学への移管の影で「布令大学」・「植民地大学」と呼ばれた時代があった!――を検討した第III部のほか「植民地大学関連年表」,「植民地大学文献目録」,「植民地大学アーカイブズ紹介」からなり,教育・政治・思想・帝国など「歴史のなかの知の態様」に触れることができる。
朝鮮人社会の不満を抑える象徴=京城帝国大学,台湾の大学というよりは国内帝国大学の延長=台北帝国大学との性格づけにとどまらない複雑な帝国日本の縮図を読み取れる。