書誌情報:平凡社新書(Y780),199頁,本体価格780円,2012年12月14日発行
- 作者:坂野 徳隆
- 発売日: 2012/12/14
- メディア: 新書
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日本統治下の台湾には『台湾日日新報』(1898年〜1944年)が台北唯一の日刊紙であった。台中,台南,花蓮港でも地方紙が発行されていたというが,発行期間,部数,内容において台湾屈指の新聞であった。漢文の紙面もあった。
日本では大正デモクラシーの時期にあたる台湾でこの『台湾日日新報』に風刺漫画を画いていた画家がいた。出自,来台前の経歴などが不明の謎の画家・国島水馬(本名:国島守)である。本書は「あの人間くさく風情があり,どこか温かみを感じさせると同時に痛烈な皮肉に満ちた国島の風刺漫画」(193ページ)から台湾の歴史を読み解いた。経済活動,関東大震災の衝撃,霧社事件,宗教,メディア,台湾自治などを国島の風刺画から台湾をとらえている。入口はたしかに国島の風刺画だが,その背景や事実の描写に著者の力を感じとることができる。
当時バナナ輸送はじめ内台航路は日本郵船,大阪商船に独占されていた。そこに食い込んだ新興船会社・山下汽船の動きもきちんと押さえていた。山下汽船の台湾の基点(南支と南洋)は打狗(高雄)だったことをあらためて知った。
改姓名運動,皇民化政策,国語常用運動,日本人化運動などによって台湾も戦時色を強めていく。そんななかで,粗い事前検閲をくぐり抜けながら,御用新聞に載った国島風刺漫画からその風刺の意味を探ることで日本の植民地統治の裏表を考えることができた。
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