997加瀬英明著『日本と台湾――なぜ,両国は運命共同体なのか――』

書誌情報:祥伝社新書(335),249頁,本体価格800円,2013年9月10日発行

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日本の台湾統治50年を高く評価し,返す刀で中国(中国共産党)および国民党支配の台湾にダメだしをする。南京虐殺はでっち上げであり――「中国国民党の謀略として捏造され,事実無根であることが,立証されている」(196ページ)・「中国が捏造したもの」(212ページ)と断言している――,「日本が戦後も,朝鮮と台湾を統治したとすれば,朝鮮戦争も起こらなかったし,中国大陸に駐兵しつづけていれば,大陸が赤化することもなかった」(248ページ)との主張をみれば,著者の立ち位置は明確であろう。
「いま,日本はアメリカによる占領体制――「戦後レジーム」から脱却して,教育を正常化して愛国心を回復し,占領憲法を改正しようとしている」(227ページ)として,独立国家としての台湾との運命共同体の構想は,著者の対中国および対韓国姿勢の表れでもある。「中国には公共の精神も,衛生観念も,羞恥心もない」(50ページ)。中華思想よる華夷秩序から抜け出ていない中国とどうつき合うべきかについてはなにも語っていなかった。
それでも,中国,朝鮮・ベトナム,日本の龍の爪の数や台湾の国際法上の位置,アメリカの台湾にたいする戦略的変遷などは参考になった。