1097マリナ・アドシェイド著(酒井泰介訳)『セックスと恋愛の経済学』

書誌情報:東洋経済新報社,x+313頁,本体価格1,800円,2015年1月1日発行

セックスと恋愛の経済学

セックスと恋愛の経済学

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「超名門ブリティッシュ・コロンビア大学講師の人気授業」とあった。セックスと恋愛を経済学的に説明できるとあれば以前一世を風靡した経済学のことかと思いきや,まさにその通りであった。違うのは,恋愛,セックス,婚活,結婚,不倫,離婚,同性婚などへのアプローチは社会学分野の調査にもとづいており「実証」ではないこと。
無防備な婚前交渉の期待費用=妊娠確率×結婚によって得べかりし収入,ある専業主婦の不倫の期待費用=不倫発覚率×夫が離婚に踏み切る確率×離婚に至った場合に彼女が被る経済的損失,などのツールを使い婚前交渉と不倫への実行・不実行の分水嶺を確定するわけだ。また一夫一婦制を女性の高等教育化・高技能化(要は女性の価値が高まる)によって金持ち男であったとしても複数の妻を持つことを難しくしたと説明する。パレート「効率」や拡張的・集約的収益の変化などの用語を使っているのも特徴だ。
男女比のバランスや人種などに言及し,学生の性行動,避妊と性病,10代での出産を考える素材を提供していた。大学での人気授業が経済学的に説明することではなく,セックスそのものを取り上げているからと言えなくもない。