1112小林美希著『ルポ 保育崩壊』

書誌情報:岩波新書(1542),xi+239頁,本体価格800円,2015年4月21日発行

  • -

安倍首相は自民党総裁再任にあたり「ニッポン一億総活躍プラン」を発表し,アベノミクス第2ステージとして「新3本の矢」を謳う。その第2の矢が「夢をつぐむ子育て支援」であり,待機児童ゼロの実現や幼児教育の無償化の拡大,多子世帯への重点的な支援などが挙げられた。
保育現場では保育の公共性からその担い手を社会福祉法人に限ってきたが,小泉改革の一環で保育の規制緩和を推進し株式会社の参入を認めた。第2の矢で言う待機児童ゼロの実現はその延長で構想されている。著者がルポした保育崩壊の現場は待機児童ゼロのまやかしを暴いている。
また臨時・非常勤職員が増え新規参入株式会社経営の過酷な環境からは保育士の労働実態が浮かび上がっている。保育が営利目的化することで利益を生む産業になっている現状は待機児童ゼロの背後で進む保育行政の問題点を突いている。
保育労働がブラック化していることはみなが知っている。保育士のワーク・ライフ・バランスがはかられなければ待機児童ゼロの掛け声もむなしく聞こえる。