1114マリー=モニク・ロハン著(村澤真保呂・上尾真道訳戸田清監修)『モンサント――世界の農業を支配する遺伝子組み換え企業――』

書誌情報:作品社,565頁,本体価格3,400円,2015年1月20日発行

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本書はドキュメンタリー『モンサントの不自然な食べもの』――NHK-BS「世界のドキュメンタリー」「アグリビジネスの巨人――“モンサント”の世界戦略――」として2008年に放映された。DVD→[asin:B00FS1PHEK]――のために調査した内容にもとづいている。
PCB,ダイオキシンラウンドアップ(除草剤),ポジラック(牛成長ホルモン),遺伝子組み換え作物(大豆,トウモロコシ,綿花,菜種)の製造元であるモンサントが公害企業として有名でありながらアグリビジネス企業として世界の農業を支配しようとしている恐ろしい実態を告発している。政治家と政府機関だけでなく科学者や一介の農民までも籠絡している姿は醜悪ですらある。
遺伝子組み換え作物は普通の作物と変わらないという「実質的同等性」論と関係官庁・モンサントの「回転ドア」の批判は TPP 協定の大筋合意という現段階でこそ有効だ。モンサントは TPP を推進する企業連合の有力メンバーであるからである。
著者によるドキュメンタリー発表後の反響についての補論,日本の遺伝子組み換え情報室による解説など資料的にも充実している。
「「遺伝子組み換え」広がる」などと導入するのが世界の趨勢とばかりにミスリードする記事(日経「でーたクリップ」2015年9月25日付)はモンサントの提灯持ちにほかならない。