1191篠原三郎著『”大学教授”ウェーバーと”ホームレス”マルクス――Tさんへ 「現代社会論ノート」――』

書誌情報:市民科学研究所発行・晃洋書房発売,vi+125頁,本体価格1,200円,2015年8月30日発行

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「芸術社会学」(「文学研究者」とも)を専門にするTさんへの手紙という形式をとった,研究者に市民の立場で研究することを提起する「市民の科学」論と読んだ。もともと会計学経営学の研究者である著者は研究者に社会・歴史理論と強い倫理観を本書に込めている。
生活できる土台の上で学問と政治との関係を問うたウェーバーと「ホームレス状態」で「職業としての学問」を最初から論じ得ないマルクスとを対比させた第4章はごく短い文章である。数冊の本への感想をてがかりに資本主義の問題性を抉ることで「市民の科学」者としての姿を追っていた。資本主義への懐疑と共生のメッセージが折り込まれた断想にはマルクスの経済学的分析が横たわっていた。