1605村上護編『山頭火 一草庵日記・随筆』

書誌情報:春陽堂山頭火文庫4,534頁,本体価格1,200円,2011年8月5日発行

四国遍路日記(昭和14年11月1日〜12月16日),松山日記(昭和15年1月1日〜8月2日),一草庵日記(昭和15年8月3日〜10月8日)および日記や雑誌に載った随筆からなっている。
山頭火は,「ひよいと四国へ晴きつてゐる」と詠み一草庵に居を定め約10カ月間禅の修業と句作に勤しんだ。1939(昭和14)年のことだ。日記の最後の一行は「更けて書こうとするに今日は殊に手がふるへる」で終わっている。
繙いたのは労研饅頭に触れているからで,読み飛ばしがなければ,日記には,「労研饅頭(ろうけんまんとう)一包——十銭,胡瓜一本——十銭」(1940(昭和15)年7月22日,134ページ)の購入記録がある。
ほかにも労研饅頭とは特定できないものの,「十銭 饅頭」(同年3月21日,96ページ)——金額からすると労研饅頭だろう——,「マンヂユウ」(同年8月29日,同上書,173ページ)も確認できる。山頭火が足繁く通った大街道の「うどん亀屋」のうどんは一杯5銭の時代であり,食いしん坊の山頭火は労研饅頭を8個買って何回かに分けて一人で食べたのだろう。
山頭火の日記から労研饅頭の記録の指摘は評者が初めてではなく,多くの方が指摘されている。あらためて日記原典での記述を確認したにすぎない。