659大崎裕史著『日本ラーメン秘史』

書誌情報:日経プレミアシリーズ(081),222頁,本体価格850円,2011年10月11日発行

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ラーメンを年間800杯前後(通算2万杯),全国約9500軒のラーメン店を食べ歩いている体験的ラーメン論である。食べ歩るきが仕事とはいえ,1日3食ラーメンとはすごい。自称「日本一ラーメンを食べた男」は看板だけではないとみた。
松山から東京の飛行機中に一気に読み終えた。「秘史」というほど「秘史」はないが,ラーメンにかんする蘊蓄をヒシヒシと披露している。日本初のラーメン店・「来々軒」(浅草,1910年),「ダシ」と「タレ」,醤油や塩の種類,メンマの由来,ここ10年のラーメン業界の変化,「湯切り」パフォーマンス――「天空落とし」,「ツバメ返し」,「華厳の滝」,「ロックンロール湯切り」,「ヒゲダンス湯切り」など――,隠れご当地ラーメン,券売機導入の理由,つけ麺流行など実在ラーメン店の紹介ともども楽しく読むことができた。
「飛行機や新幹線に乗ってでも食べに行きたい」ご当地ラーメンの松山では,評者がひところ通い詰めた「瓢華」を推薦していた。「愛媛県松山市には,「瓢太」「瓢華」というように店名に「瓢」がつく店が多く,これらは「瓢系」と呼ばれている。そして松山のラーメンは日本一甘い。とんこつベースの甘い醤油スープは,慣れないと食べれないくらい独特な味だ。スープはインパクトがありすぎるが,麺は至って普通の中細ストレート麺である。瓢系はいくつかの店があり,プチご当地といえるだろう。まだマスコミでも取り上げられていない,隠れご当地といえる」(206ページ)。
「瓢華」は現在は「溝辺」と「湊町」にある。以前は,清水小学校の前(樋又通り)と山越に店があった。評者が足繁く通ったのは樋又通りにあったときの店だ。「日本一甘い」,「独特な味」はまさにその通りで,「瓢系」の特徴の「あるもの」を入れてタレを作るからである。チャーシューはとろけるほどである。改装オープンの時には評者の秘密の商売繁盛日を参考にしてもらったことがある。店が溝辺になってからはおっちゃん・おばちゃんと会っていない。松山のイケ麺たちにしか知られていないご当地ラーメンであることはまちがいない。「瓢太」は市駅近くにあり飲み屋を兼ねている。飲んだあとにその場でラーメンで締められる。