書誌情報:ミネルヴァ書房,vi+350頁,本体価格3,200円,2012年2月20日発行
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イギリス,フランス,ドイツを中心に近代以降の経済学の歴史を概観したオーソドックスなテキストである。とはいえイタリアにおける経済学,20世紀後半以降の現代経済学,日本における経済学を組み込んで経済学展開の多様性を意識している構成は新機軸である。経済学史のテキストとして「様々な経済学の興亡の可能性」(336ページ)を探り,現代経済学のみを経済学とせず,「相対主義的視点」(同上)を採り,現代経済学にいたる克服と継承を鮮明にした編集には評者も賛成だ。
評者の講義の体験からすると,日本における経済学の展開と現代経済学の主流・それを批判する潮流に言及しないと,経済学史は経済学の歴史を回顧するだけのしんきくささを払拭できない。
通史の時間軸を現代まで辿り,対象をラテン世界とアジア(の日本)にまで広げた。編者を含め20名の執筆者によって可能になった通史といえるだろう。アジアにおける経済学の展開はすくなくとも日本人研究者によるものとしては未開拓であり,経済学史の可能性を感じることができたテキストである。いくつかのコラムのほかさらなる学びに応える基本図書とキーワードで各章をまとめている。
経済思想家を対象とした通史と各国における彼らの思想の受容とが交差する経済学史もあってしかるべきとのヒントを得た。
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