書誌情報:中央公論新社,650頁,本体価格3,000円,2013年3月10日発行
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写真家・薈田(わいだ)純一による立花蔵書の写真とそれを納めた書棚の前で語った立花の言葉が分厚い本書になった。 薈田が開発したという「精密書棚撮影術」――書棚の一段一段をレーザー墨出し器で撮影し,のちにすべての棚の写真を面合わせして合成する――は収録されている本の背文字や汚れなども再現している。書棚の写真「も」(「こそ」?)本書の魅力だ。
自宅兼仕事場のネコビルだけでなくそれ以外の書庫と立教大学内研究室の本棚が主役だが,床の上に積み上げられた本と段ボールに入った資料類は被写体から外されている(本棚とともに一部映っている)。
10万冊とも20万冊ともいわれる立花の蔵書は,図書館のような分類ではなく仕事に対応したジャンル毎の整理のようだ。どこになにがあるかというおおまかな場所から背文字が見えることで使うときに探し出すことができるのだろう。床の上に積み上げられた本や雑誌・資料は別として,縦横は問わず背文字が見える配列(つまり本棚に二重三重に収納しない。ただし,撮影時に本の背表紙を前面に出したという。)は徹底している。
通路や階段などにも置かれた本を除けて撮影したらしいから,書庫は倉庫と化していたのかもしれない。それも含めて「書棚は持ち主の知的歴史の断面」(帯から)を表しているのは間違いない。
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