書誌情報:仮説社(やまねこブックレット3),79頁,本体価格800円,2013年11月15日発行
- 作者:板倉聖宣
- 発売日: 2013/11/15
- メディア: 単行本
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脚気研究史からの教訓である。「科学研究というものは厳正なものでなければならないはずなのに,そんなことよりも派閥の力がものを言ってきたことが恐ろしく思われる。これは,昔のことばかりとはいえない。いまもなお,いろいろな研究分野,とくに創造性が必要とされる分野で繰り返されているといって間違いないだろう」(76ページ)。
脚気はビタミンB1(チアミン)の欠乏によっておこる。いまでこそ常識になった考え方が医学・栄養学の常識として認知されるまでを,「模倣の時代」を体現した当時の東京大学医学部や陸軍省医務当局とその模倣の枠を乗り越えて脚気の予防・治療法を創造する医学者たちとの相克を描く。漢方医と西洋医,陸軍と海軍,米飯(白米)と麦飯,麦飯派と伝染病派,脚気食品中毒説などから科学研究に入り込んだ「派閥の力」から自由になった真実の発見までを辿っていた。
脚気研究に模倣と創造の試行錯誤の過程を見た本ブックレットは,吉村昭『白い航跡』(講談社文庫,(上)[isbn:9784062765411](下)[isbn:9784062765428],いずれも新装版)の主人公・高木兼寛の時代背景と生涯に重なっている。
本ブックレットは板倉の『模倣の時代』(仮説社,(上)[isbn:9784773500745](下)[isbn:9784773500769])【評者未読】の「簡約版と言えるもの」(「前口上」)とのことだ。
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- 西川長夫著『パリ五月革命 私論――転換点としての68年――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20120424/1335277497
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- 島野清志著『危ない大学・消える大学 2012年版』,木村誠著『消える大学 生き残る大学』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20110424/1303655632
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- 稲垣恭子著『女学校と女学生――教養・たしなみ・モダン文化――』→https://akamac.hatenablog.com/entry/20070424/1177402381