1589三浦綾子著『ちいろば先生物語(上)(下)』

書誌情報:集英社新書(み-1-8)(み-1-9),(上)358頁・(下)357頁,本体価格各560円,1994年6月25日発行

京都世光(せいこう)教会と今治教会での牧師,アシュラム運動で知られる「ちいろば先生」こと榎本保郎の伝記物語である。
著者も今治教会の週報に連載していたものをまとめた榎本著『ちいろば』(聖燈社,1968年12月10日初版,[isbn:9784915338258])に出会い本書を書くきっかけになったといい,ほかにも『ちいろば余滴』(isbn:9784915338267]),『わたしの出会った人びと』(isbn:9784915338472]),『ふつか分のパン』(isbn:9784915338335]),『祈りと冥想への道』(isbn:9784915338045]),『道に生きる』(asin:B073LYQ7V7]),『旧約聖書一日一章』(isbn:9784264029373]),『新約聖書一日一章』(isbn:9784264029410])を参照していた。
キリスト教界で知られていた「ちりろば」が著者の伝記物語によって人口に膾炙するようになった。天皇崇拝少年が満州経験と敗戦によって自己喪失と絶望から入信にいたる経緯もさることながら,聖書との対話と祈りによって確信をえてからの信仰の純粋さに圧倒される。人間くさい信仰人ゆえに,京都でも今治でもアシュラムでも大きな力を発揮できたのだろう。
農村伝道の拠点を企図した世光教会に集う高校生の集団に若き端田宣彦がおり,榎本によって洗礼を受けたこと,自分の作詞作曲の基調が小学校唱歌と賛美歌であったことを紹介していた。