書誌情報:中公新書ラクレ(783),252頁,本体価格840円,2023年1月10日発行
「ジョークや小噺を通じてお金のことを楽しく学ぶ」(6ページ)本だ。「本邦初の試み」(同)だそうで,「笑って」読んだ。「働き方」を笑い飛ばそう,経済をユーモアで,貧しい人も富める人も,ギャンブルは是か非か,お金を巡る罪と罰,お金を巡る人間模様と,よくぞこれだけのジョークを集めてくれた。
マーク・トウェインの,「銀行家とは,日がカンカン照っているときに傘を貸してくれて,雨が降り始めるとたちまち,それをとりあげてしまう連中のことだ」(112ページ)とはまさに「至言」である。面接試験の試験の結果,第3位の女子学生が社長の決断で決まった。決め手は「胸が大きかった」からとは少々お下品ではある。このエピソードにはお金が直接はからまず,賢明な著者にしては選択を間違えたように思う。
息子に後を継がせるかどうか悩んでいた農場主は,リンゴと聖書と1ドル紙幣を息子の机の上においた。リンゴを取れば農場を継がせ,聖書を取れば牧師にし,1ドル紙幣を取れば実業家にしようと考えた。息子はリンゴを齧りながら,聖書に腰掛けていた。農場主が息子に聞く。「おい,1ドル紙幣はどうした?」。息子はこう答えた。「知らないよ」。息子は後に政治家になったそうだ(「息子の将来」218-9ページ)。
「政治家の役割は,国民に「ツマミをポジティブに回せ」と命じることではない。自然にツマミをひねりたくなるような状況を「器」として整備していくこと」(95-6ページ)や「「看板倒れ」や「先送り」だけは避けていただきたい」(103ページ)など,著者のジョークは鮮やかだった。
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