1043加藤薫著『イコンとしてのチェ・ゲバラ――〈英雄的ゲリラ〉像と〈チェボリューション〉のゆくえ――』

書誌情報:新評論,iv+179頁,本体価格2,200円,2014年2月25日発行

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1960年3月4日早朝,ハバナ港に停泊中のフランス船籍貨物船クーブル号が大爆発を起こし,二百数十名の死傷者を出す大惨事となった。クーグル号に積荷は約70トンものベルギー製兵器で革命直後のキューバが買い付けたもの。キューバの軍備強化を妨害するCIAの仕業だと言われている。カメラマンのアルベルト・ディアス・グティエレス(通称コルダ)が,翌日の追悼式に参列していたゲバラ(当時キューバ国立銀行総裁)を二葉の写真(縦と横)にたまたま撮っていた。横の写真こそのちに「世界で一番有名な肖像写真」になる。のちにゲバラのイコンの多くはこの写真をもとにしている。
著者はゲバラのイコンを必要とした人びと――主観的意図としては社会正義や公正な社会の実現をめざす――を追い,イコンそのものを集成している。ゲバラについての新事実や新解釈を含んでいないとしながらも,ゲバラが殺されたラ・イゲラ村(ボリビア)に立ち戻り,南米を中心としたイコンを追っている。
マラドーナの右上腕にはゲバラのタトゥーが入っていた。アイスクリームやコンドームのパッケージにもゲバラがいる。ウォール街占拠のデモではゲバラ旗がたなびいていた。ゲバラのイコンを必要とする多くの物語がこれからも紡がれるはずである。