1042下谷政弘著『経済学用語考』

書誌情報:日本経済評論社,viii+212頁,本体価格2,800円,2014年2月18日発行

経済学用語考

経済学用語考

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著者は多くの文献資料にあたって,「系列」「戦略」「談合」「理財学」「産業」「重化学工業」「コンツェルン」など日本語の経済用語の確定と定着を探求していた。
経済関連の「和製漢語」(「企業」「資本」「商社」「動産」「証券」などおびただしい例がある)や語尾に「主義」「問題」「時代」などを付ける造語法は,本書でも導入章で紹介しているように,よく知られている。著者はさらに経済用語がどのように定着したのかを丹念に探索している。
経世済民」に由来する「経済」を敬遠して使った「理財」――財務省の「理財局」にその名を残す――に代わって「かつての漢籍語の短縮形であったものから西洋語 economy の新たな翻訳語へと転換し」(88ページ)たことや「コンツェルン」が「ドイツからの 'Konzern' の用語は日本に輸入されてまず財閥に充てられ,その財閥が「産業横断的な独占体」であったことから,日本語の「コンツェルン」の内容も変質した」(201ページ)ことが詳しく展開されている。
著者は高校時代の3年間速記(中根式)に熱中したという。それが「経済学と国語学とのハイブリッドな内容」(下谷「速記と日本語」日本経済評論社のPR誌『評論』第195号,2014年4月)に結実しているからおもしろい。かくいう評者も中学時代に速記(ひところ流行った通信教育の早稲田式)を習ったことがある。まったくものにならなかっただけでなく,それっきりになってしまっている。