701津田大介著『情報の呼吸法』

書誌情報:朝日出版社(idea ink 01),165頁,本体価格940円,2012年1月15日発行

情報の呼吸法 (アイデアインク)

情報の呼吸法 (アイデアインク)

  • 作者:津田 大介
  • 発売日: 2012/01/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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ツイッターで「tsuda る」を実践し,「情報をシェアすることでムーブメントを起こすことに力点を置いて」(25ページ)きた著者の体験的ソーシャルメディア論である。マスメディアとソーシャルメディアを対立的に描くのではなく,クラウド・コンピューティングの普及と「リアルタイム紀行」・「リアルタイム報道」によってメディアへのかかわりが大きく変化するという見通しを示す。
タイトルは「呼吸するようにさまざまな情報を自らの武器として活用できる」「情報新人類」(「はじめに」)への熱い思いを込めたものだ。情報のインプットとアウトプットのバランスを取って,情報リテラシーを磨けのメッセージには共感する。「いまだにマスメディアしか見ていない人と,ソーシャルメディアも使いこなしている人との間には,情報に関して圧倒的な差があ」(46ページ)ることやソーシャルメディアが新しい人と人との結びつき(「ソーシャルキャピタル」=「人間関係資本が豊富な人へのアクセス権」(162ページ))を生み出すことも――akama るしていない評者だが――当たっている。
ソーシャルメディアの一端になんとか連なっている評者には,「興味のあることや問題意識を共有することで,人間関係をソーシャルメディア上の「棚」に常にしまっておくこと」(150ページ)の意味をよく自覚できた。「損得ではなく,お互いに人間として常に興味を持ち合っているような関係」(151ページ)の強調は「新しいソシエタル・パラダイム」に通じていた。