1156柴田哲孝著『下山事件――暗殺者たちの夏――』

書誌情報:祥伝社,506頁,本体価格2,000円,2015年6月30日発行

下山事件 暗殺者たちの夏

下山事件 暗殺者たちの夏

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下山事件の実行部隊の本拠は,日本橋室町3丁目の通称”ライカビル”内のサロンだった。主だったメンバーは亜細亜産業,日本金銀運営会,神竜組のほか,元大陸浪人,元関東軍特務機関員,関東軍防疫給水部本部七三一部隊)の経歴をもち,日本の発電事業と国鉄の電化事業に利権の帰趨がかかっていた。
柴田はすでに『下山事件 最後の証言』祥伝社,2005年(文庫,2007年,isbn:9784396333669)で身内(祖父)がこの謀殺にかかわっていたのではないかとしていた。本書はそれをふまえて実行にいたる証言や状況証拠を篩いにかけ,創作手法によって下山謀殺を再現しようとしたものだ。
もし,実行犯たちのその後の追跡や手記など記録による検証が可能になったとしたら,下山事件の真相が詳らかになる。「この物語は,フィクションである。(改行)だが登場する人物,団体,地名はできる限り実名を用い,物語に関連する挿話もすべて事実に基づいている。その他,匿名の人物,団体,創作の部分に関しても,実在のモデルや事例が存在する。(改行)それでもあえて,この物語はフィクションである。」(扉の言葉)