1714古野まほろ著『公安警察』

書誌情報:祥伝社新書(673),274頁,本体価格980円,2023年3月10日発行

折も折,公安警察の機能は「カルト対策に尽きる」(214ページ)ということや現役警察庁官僚時代にフランスにおけるカルト対策の調査研究をしたことがあるという本書を読んだ。後半末尾の章での「吉野教」(想定上の宗教団体)対応実務はもっとも臨場感があった。
いわゆる「公安」の組織論や実態論を詳しく述べ,思想弾圧や特定の団体を壊滅させたりするような組織ではないことを強調し,「超法規的で陰湿なスパイ活劇でもなければ,非人道的で抑圧的な陰謀・暴力でもない」(106ページ)と言う。実態としては,「超具体的にはハニトラ。あるいは,上手いこと型にはめて不相応な借財を負わせること。無論それらによって郎略し誑(たら)すこと,裏切らせること」(147ページ)は否定していない(のちにこれらは「全部駄目」(190ページ)と書いている。)潜入捜査や盗聴はないともいう。もっとも,秘密裏に実行するわけだから「してます」というわけがない。
情報提供はボランティアに頼るわけにはいかないので,「謝金」を渡す。「経費と労苦に応じた,時に命の危険に応じた社会通念上適正な額」(190ページ)という。