1441(その2)山本章子著『日米地位協定——在日米軍と「同盟」の70年——』

書誌情報:中公新書(2543),xi+256頁,本体価格840円,2019年5月25日発行


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一度紹介してから(関連エントリー参照),本書の主題に関係する事実が明らかになった。ひとつは,泡消化剤事故のその後についてである。冒頭こう書いた。

4月10日夕,宜野湾市の米軍普天間飛行場からドラム缶700本分以上の泡消化剤が住宅街に漏れた。この消化剤には有機フッ素化合物「PFOS(ピーフォス)」が含まれており,2000年ごろから使用や製造の禁止など各国で規制されるようになった。漏れた原因の汚染に実態調査には基地内調査が必要になるが,日米地位協定によってその調査には米軍の許可が必要である。今回は基地内立ち入りまでは実現し,水の採取を認めた。だが,土壌採取の求めには応じず土の入れかえを始めている。

在日米軍は,除去した土と泡消火剤が基地外に流れ出る際に通った排水路周辺の8地点の土を採取し日本政府と県にも提供したとのことだ。これ以上のことは不明だ。

もうひとつは日米地位協定国際法上に位置づけにかかわる事項である。朝日新聞の記者が総務省の情報公開・個人情報保護審査会に審査請求への答申書の内容である(朝日新聞2020年5月14日付)。「日本政府が米軍に日本の法律を原則として適用しない理由を「一般国際法上」と説明していた問題で,その根拠となる文書を外務省が確認できなかったことがわかった」というものだ。日本政府が国際法上の根拠を示すことができるはずがない。こう書いた。

日米地位協定は新日米安全保障条約(1960年1月)とともに調印され,それ以前の日米行政協定が改定されてできた在日米軍に関する取り決めである。さらに起源を辿れば,「敗戦国」日本がサンフランシスコ講和条約を締結する際(1951年),「独立」後も引き続き米軍の駐留と基地の使用を認めることにしたのが日米安保条約と日米行政協定である。改定された日米行政協定には,基地使用,米軍の演習や行動範囲,経費負担,米軍関係者の身体の保護,税制・通関上の優遇措置,生活などに関する諸権利,を保証するものだ。

(中略)

米軍の日米行政協定による既得権益要求と日本の表面上は在日米軍基地の運用を日米共同でおこなうとした日米地位協定とにあって,日米行政協定での米軍の地位と特権を保証したのが日米両政府が作成した「日米地位協定合意議事録」である。日米地位協定の問題とは,条文ではなくこの「合意議事録」にもちづいて運用されてきたことにある。「合意議事録」は2000年代まで非公表とされていた(現在は外務省のホームページで公開)。「合意議事録」の問題性は明らかである。

-関連エントリー
--山本章子著『日米地位協定——在日米軍と「同盟」の70年——』→https://akamac.hatenablog.com/entry/2020/05/01/120346

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