書誌情報:八朔社,337頁,本体価格3,500円,2015年3月31日発行
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マルクスとエンゲルスの遺稿である『ドイツ・イデオロギー』(1845〜46年執筆と推定されている。以下『ド・イデ』と略称)第1章「フォイエルバッハ」のオンライン版編集=研究グループによる論文集である。
よく知られているように,『ド・イデ』はマルクスとエンゲルスによる共同執筆であり,草稿にはふたりの推敲作業の痕跡が残されている。草稿の存在はすでに1859年(マルクス『経済学批判』第1分冊「序言」)明らかにされていたものの,草稿の公刊はリャザーノフ版(1926年),旧MEGA版(1932年),新MEGA試作版(1972年),新MEGA先行版(2004年)と諸版があった。草稿と異文テキストの解読とその表記ついて,旧MEGA版と新MEGA試作版は本文テキストに草稿の最終テキストを収録し,前者は異文(最終テキストまでの改稿)を巻末に後者は別冊に収録していた。
廣松渉編訳『新編輯版 ドイツ・イデオロギー 第1巻第1篇』(河出書房新社,1974年)は,改稿によって生じた異文を本文テキストに〈〉内に入れるリャザーノフ版を踏襲したが,異文の大半を新MEGA試作版ではなく旧MEGA版巻末一覧から取り込んだものだった。それに対して渋谷正『草稿完全復元版ドイツ・イデオロギー』(新日本出版社,1998年)は草稿とリャザーノフ版,旧MEGA版,新MEGA試作版,廣松版を照合することによって廣松版の不備を指摘し新MEGA試作版の修正補完を試みたのだった。
その後,小林昌人補訳『新編輯版 ドイツ・イデオロギー』(岩波文庫,2002年)は廣松版の「補」としながら渋谷版をもとに異文を修正したものだった。
『ド・イデ』の伝承と編輯に関する経緯をふまえて,予定されている新MEGA当該巻とは独立した研究成果として編まれたのが本書であり,それをオンライン版(2016年予定)として公表する準備資料でもある。オンライン版のコンセプトに集約する前半の6章(および附属資料のサンプル),史的唯物論の源泉問題と『ド・イデ』の東アジアでの翻訳史を扱った後半の8章からなっている。
『ド・イデ』が書かれて170年。その全貌がようやく明らかになる。
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