1762片山まび・杉山享司・古屋真弓・芦生春菜・田代裕一朗著李芝賢韓国語訳『柳宗悦の心と眼ーー日本民藝館所蔵朝鮮関連資料をめぐってーー』

書誌情報:東京藝術大学出版会,526頁,本体価格6,000円,2023年12月26日発行

柳宗悦は1916年から1940年まで21回朝鮮を訪れている。柳27歳から51歳にあたる。本書は,日本民藝館所蔵の柳宗悦朝鮮関連資料(肉筆原稿,冊子,刊行書籍を中心とした参考資料)の悉皆調査報告である。
柳は,朝鮮をくまなく歩き陶磁器や民芸品・工芸品を蒐集し,当地に私設の朝鮮民族美術館をつくった。この資金は,日本の『白樺』同人,朝鮮文芸誌『廃墟』同人,妻兼子による日本国内や朝鮮各地で開催した音楽会での収益金などでまかなわれた。柳が朝鮮総督府の方針に逆らい光化門の保存・移築でその破壊を免れたことはよく知られている。柳自身,文章を書き運動を広げるきっかけになった2つのことーー光化門の保存・移築と沖縄県当局による沖縄方言撲滅論にたいする沖縄方言保護論ーーを述懐している。
柳の「(芸術こそが)只此世に真の平和や友情を内側から持ち来すもの」を実感する一次資料である。