書誌情報:岩波文庫(1435),x+221+21頁,本体価格800円,2013年7月19日発行
- 作者:中見 真理
- 発売日: 2013/07/20
- メディア: 新書
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柳宗悦といえば民芸運動,民芸運動といえば柳宗悦の印象が強い。平和思想の型を取り出し,多元的な平和戦略論を組み立てようとして柳に接した著者は民芸運動の根底に平和思想があることを手掛かりに「複合の美」を発見した。著者は「複合の美」の思想をもって柳を民芸から解き放し,柳をして「複合の美」の平和を求めた思想家として描いている。
クロポトキン,ホイットマン,ブレイクらの「相互扶助論」に触発されての民芸と朝鮮美の評価,非暴力・非戦と「複合の美」との結合による「複合の美」の平和論,周辺文化の尊重と「信」・「美」一致による「美の宗教」運動など柳思想の骨格が明らかにされている。
著者は,柳思想の現代性を,「複合の美」が世界の単一性(「強者」や「自己中心主義」「自己絶対視」)を許容せず多元性を尊重することに繋がること,柳の思想と行動の軌跡が民族と地域の文化を活かした平和論の可能性を示唆していること,暴力ではなく非暴力の文化力が最終的に積極的な力をもっていると示したこと,と纏めた。
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