1795貴志謙介著『戦後ゼロ年 東京ブラックホール』

書誌情報:NHK出版,318頁,本体価格1,700円,2018年6月30日発行

NHKスペシャルのドキュメンタリー・ドラマ「戦後ゼロ年 東京ブラックホール 1945-1946」(2017年8月20日放送)の書籍版である。
戦後直後の闇市や東京租界の痕跡は今はない。戦後ゼロ年のブラックホールも見えなくなってしまっている。だが,アメリカに寄生した地下政府やCIAと結託した右翼,占領軍を食らう成金紳士などいまの日本に続く「時空を越えた通路」がある。
評者が今関心をもっている特殊慰安婦(施設)についてこうある。「敗戦国であるドイツやイタリア,あるいはソ連に占領された東ヨーロッパの国々にも,占領軍を相手にする売春婦は大勢いた。しかし,国家が号令を発して,莫大な予算を投じ,官僚がプロジェクトを組み,「国体護持」のために女性を犠牲にするという”理想”を高らかに掲げた国はほかにない」(122ページ)。
そういえば,江藤淳田中角栄をして「闇市民主主義」と呼んだ。なるほどカネをつくりカネをばらまく。手法は違えどかの裏金と変わらない。