1655川口康平・金澤匡剛著「公共図書館の置換効果」

書誌情報:Journal of the Japanese and International Economics,Vol.66, Dec. 2022, 101219
Open access: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0889158322000284?via%3Dihub

公共図書館がベストセラー本を1冊ならまだしも,利用者のニーズがあるとして何冊も揃えるのは書籍の販売に悪影響を及ぼす,との意見がある。評者は,ベストセラーだからといって公共図書館が後追いで何冊も所蔵することには懐疑的である。
この論文は,日本の書店チェーン店である紀伊國屋公共図書館のデータを活用して書籍販売と公共図書館所蔵との関係を分析している。その結果,図書館での一冊購入は,売上トップ6分の1の書籍では一ヶ月当たり0.24冊,ベストセラー本については同0.52冊の置換効果があり,売上減に結果しているとする。
この数字は評者の予想よりも小さい。もっと大きな数字であったなら,著作権法第38条第5項で映画の著作物に認められている公共貸与権(Public Lending Right)を書籍についても適用することを考えなければならないだろう。