853児美川孝一郎著『キャリア教育のウソ』

書誌情報:ちくまプリマー新書(197),190頁,本体価格780円,2013年6月10日発行

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「「夢」や「やりたいこと」に拘泥するようなキャリア教育に,いったいどれほどの価値や意義があるのか」(17ページ)。評者は著者の意見に大賛成だ。高校入学者総数を100人にたとえると,中等教育・高等教育を経て新卒就職をして,かつ,3年後も就業継続している者(=ストレーター)は41人しかいない(文科省「学校基本調査」と厚労省「新規学校卒業者の就職離職状況調査」をもとにした著者の推計)。巷に喧伝されるキャリア教育とはこのストレーターをひとりでも増やすことに向けられているかぎり,まやかしにすぎないという著者の批判は当たっている。
夢ややりたいことだけでなく現実との折り合いをつけることでなければキャリア教育にはなりえず,日本の産業構造・職業構造・労働実態といった「職業や仕事についての理解を深める学習」(75ページ)が必要なのだ。だからキャリア教育は「学校全体」・「学校の教育課程全体」に居続けられなければならない(そうすると著者が所属する「キャリアデザイン学部」はその存在意義を問われることになる)。
「認識の”土壌”を耕しもせずに,キャリアプランという”果実”だけを収穫しようとしている」(131ページ)現在のキャリア教育に替わって,「多様な可能性や選択肢に気づかせるような,さまざまな素材や機会を提供する」(133ページ)キャリア教育への転換という著者の提案は至極真っ当だ。
正規雇用に就かざるをえない若者が一定割合で存在することを直視して,「「正社員」信仰の脱「神話化」」(154ページ)をはかれ。非正規雇用を炙り出し,現実化させるキャリア教育の充実は,いまやるしかない。