989森まゆみ著『反骨の公務員,町をみがく』

書誌情報:亜紀書房,227頁,本体価格1,800円,2014年5月23日発行

反骨の公務員、町をみがく---内子町・岡田文淑の 町並み、村並み保存

反骨の公務員、町をみがく---内子町・岡田文淑の 町並み、村並み保存

  • 作者:森まゆみ
  • 発売日: 2014/05/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

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愛媛県内子町の元職員・岡田文淑(ふみよし)が主人公である。岡田は一職員として内子町の町並み保存と同町石畳地区の村おこしに奔走した。地方公務員としての立場を生かしたというよりも,住民との対話や町並み・村並み保存にかけた情熱がすばらしい。
ノーベル文学賞受賞者・大江健三郎の故郷でもある内子はかつて農水産の集散地として,大洲和紙の産地として,近代では木蠟産地として大いに栄えた。全国18番目の伝統的建造物群保存地区になっている内子の建造物の白壁と海鼠(なまこ)壁はその木蠟産業によってもたらされたものである。
町並み・村並み保存にかける「住民の側に立ったまちづくり型公務員」(120ページ)をとおして日本における「日本の町並み運動の40年をふりかえる」(5ページ)という元「谷根千」編集者の狙いはじゅうぶん成功していると思う。
「石畳を思う会」の主旨がいい。「(1)公的な肩書きを持たない。個人の住民として行動する。(2)会則を持たない。(3)補助金をもらわず自立する。(4)多数決で決めず,言い出しっぺがリーダーになり,事務局になって活動する。(5)徒に会員を増やさない。(6)打算を語らない。」
「元気で豊かな地方の創生」を掲げ「まち・ひと・しごと創生本部」を立ち上げた第2次安倍内閣での政策が進行する。「ふるさと創生事業」(1980年代末の竹下内閣)でも自治体・地域の力量が問われたように,町や村の誰かや「反骨の公務員」が鍵になる。