「KATANA 帰郷へ 戦後に接収? 仏の男性,持ち主探し」(朝日新聞大阪本社夕刊2022年8月26日,朝日新聞地方版2022年8月30日)を読んだ。
敗戦直後接収された1本の刀がフランスのオークションにかけられた。その刀についていた木札(持ち主の住所と名前)に興味をもったフランス人が伝を辿り持ち主の家族をみつけ,刀を返そうとしているという記事だ。木札には「愛媛県東宇和郡田之筋村大字常定寺 宇都宮政徳行」とあったことが決め手となり,持ち主が特定され,98歳の妻や娘がわかった。現在家族に返還するための手続を進めているとのことだ。
記事では「接収された刀」について解説があり,「文化庁によると,終戦後,連合国軍総司令部(GHQ)は武装解除のために軍人らの刀を接収した。その後,廃棄されたり海外に出まわったりしたものもあるという。戦後50年になっても所有者不明のまま残された刀が多くあったことから,国は95年に返還を進める法律を制定。ただ,持ち主の特定は難航し,現在までに返されたのは一部にとどまる」。この刀は木札があったために一度は海外に流出したものの持ち主(の家族)に返還される稀なケースということになる。
接収という戦利品はおそらく総司令部員によって私物化され,回り回ってオークションにかけられたということではないかと思われる。ナチスが接収した美術品——ドイツ人はこまめに記録する——とはちがい,旧日本軍が身につけていた刀を記録もとらずに一括武将解除したにちがいない。
持ち主だった宇都宮政徳は手元に返ってくることを期待して木札をつけたのではないか。77年経って宇都宮の執念が刀の帰郷を実現させたことになる。
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