1293卓球団体戦のスウェースリング方式とは?

世界卓球2024(団体)(韓国・釜山,2024年2月16日〜25日)が終わった。TVer(在京民放キー局5社と広告代理店4社が共同出資した株式会社TVerが運営するOTTサービス)では,日本の全試合を中継放送していた。決勝トーナメントの準々決勝の男子の対中国,女子の対ルーマニアの試合時間が重なり,男子の準々決勝の中継だった。WTTやテレ東卓球チャンネルでもライブ中継があり,時差なしの釜山での世界卓球を楽しませてもらった。
中継時のカメラアングルが真横からで,リプレイでは斜め後方からの映像を使っていたが,中継のラリーの眼球移動にはかなりきつかった。どちらかのサイド斜め後方からのアングルのほうがボールを追いやすく見易い。
世界卓球(団体)の試合は,ABC-XYZ方式と呼ばれる3選手のシングルスABCABとXYZYZの順番で競われる。ABCかXYZを取るかは試合前のトスで決まる。トスに勝てば,チームのエースを1番目と4番目に置くことができるABCを選ぶことが多い。日本男子の準々決勝では中国がABC,日本女子の決勝でも中国がABCだった。男子決勝ではフランスがABCだった。
同じABC-XYX方式でも国際大会では2018年から,オリンピックの東京2020(実際の開催は2021)から,ダブルスを第1試合にするB/C・ACABとY/Z・XZYXになった。1988年ソウルオリンピックで卓球競技が実施され,2004年アテネオリンピックまでは男女シングルスと男女ダブルスの4種目,2008年北京オリンピックからは男女ダブルスに代わり,男女団体(1チーム3選手)が実施されるようになった。
ところで,かつての団体戦では3シングルスの9試合方式,女子団体は1ダブルス4シングルス方式の時期があった。男子の場合は最長で9試合になることもあって,1991年に現方式に変更され,世界卓球およびオリンピックでは男女ともABC-XYZの第1試合ダブルスの試合形式に統一されている。
それもあって5シングルスあるいは1ダブルス4シングルスのABC-XYZ方式をスウェースリング方式と呼ぶこともあるようだ。スウェースリング(スウェイスリングの表記もある)方式といわれるスウェースリング(Swaythling)とは,男子団体の優勝杯であるスウェースリング杯にその名を残している(女子団体の優勝杯はマルセル・コービロン杯)。「1926年イギリスのスウェイスリング男爵夫人が寄贈した」(『ブリタニカ国際大百科事典』より)ことからこの名がついた。1926年といえば,第1回大会がロンドンで開催された年にあたる。ハンガリーが栄えある初代チャンピオンとなった(5大会連続優勝,女子は1934年パリの第8回大会から)。スウェースリング男爵は現在も続くイングランドサウサンプトン州スウェースリングに由来しており,事典にある「男爵夫人」とは第2代ルイス・サミュエル・モンダギューの夫人である。
ということは5シングルスあるいは1ダブルス4シングルスのABC-XYZ方式をスウェースリング方式と呼ぶのは正確ではない。卓球男子団体戦をスウェースリング杯だったたことからの類推でスウェースリング方式と呼称することになったのではないかと思われるのだ。かつての9シングルス時代をスウェーリング杯方式,世界卓球方式をスウェースリング方式,オリンピック方式をスウェースリング方式とする例が散見されるのはこの証拠である。
なお,世界選手権大会出場選手たちが結成(1967年)したスウェースリングクラブがある。ここにもスウェースリングの名が継承されている。

-WTT→https://worldtabletennis.com/teamseventInfo?eventId=2751
-TVerhttps://tver.jp
-テレ東卓球台チャンネル→https://www.youtube.com/channel/UCVG4KpQRpA99jZk2hHZT9-Q

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