1213門田隆将著『汝,ふたつの故国に殉ず――台湾で「英雄」となったある日本人の物語――』

書誌情報:角川書店,372頁,本体価格1,800円,2016年12月10日

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主人公は熊本県宇土市出身の父と台湾人の母を持つ坂井徳章(台湾名:湯徳章)である。台南市にある「湯徳章記念公園」(旧名:大正公園,民生緑園)には彼の胸像が立っている(→http://blogs.yahoo.co.jp/nipponia_nippon3/57755233.html)。台湾の「2・28事件」の際,騒乱の首謀者として逮捕され市中引き回しの上,大正公園で処刑された。
「台湾の若者守った日本人 民衆弾圧「2・28事件」から70年 坂井徳章弁護士 決起断念を説得,自身は処刑死」(西日本新聞2017年1月4日付,→http://www.nishinippon.co.jp/nnp/world/article/299217)で触れられているように,拷問されても決起しようとした若者の名前を決して明かさなかった。また,台湾語で「大和魂」と叫んだことや日本語で「台湾人万歳」と叫んだ直後に3発の銃弾に倒れたという。
「湯徳章記念公園」と改められ彼の胸像ができたのが事件後半世紀経った1998年2月28日。明日で19年になり,事件後70年となる。処刑死した3月13日は台南市の「正義と勇気の日」である。台南市では明日「2・28事件」犠牲者の慰霊祭がある。
坂井の父は最後の抗日武装蜂起である西来庵事件で殉職している。その彼が台湾人の人権を守る弁護士になる。日台関係を坂井徳章という人物からみる好著である。