521鎌倉啓三著『山下亀三郎――「沈みつ浮きつ」の生涯――』

書誌情報:近代文藝社,122頁,本体価格1,200円,1996年3月30日発行

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本ブログで何度か取り上げた山下亀三郎の足跡を再現しようとしたもので,亀三郎の『海運私見』,自伝的回想録『沈みつ浮きつ』や山下汽船社報をもとに山下汽船の歴史と交友・言行・処世訓抄録からなる。本書は古書店でしか入手できず,東京の某古書店で見つけたものだ(「謹呈 著者」の栞が挟まっていた)。
著者は小樽高商(現小樽商科大学)卒業後山下汽船・山下新日本汽船で働いた。当時山下汽船に入ることはあこがれだったという(1940年入社)。亀三郎の自伝によると亀三郎自身が面接試験に臨み,5分ほどで人物評価ができたという(一顔一見主義)。その眼鏡にかなったこともあり著者の亀三郎讃歌は強いものがあるようだ。
『海運私見』と社報の山下汽船関係者ならではの資料を使っており,『沈みつ浮きつ』を補完するものとなっている。宮沢喜一元首相の父親宮沢裕は東京帝国大学卒業の学士第一号として山下汽船に入社したことや媒酌人が亀三郎だったこと,また,作曲家黛敏郎の父親黛千尋は山下汽船横浜支店長をつとめたことは本書で初めて知った。泥亀も山下学校も亀三郎の実像にちがいない。
亀三郎は「大用院殿義海超遷大居士」として多磨墓地に眠っているそうだ。